COLUMN

PANACEA

社内ブログ

信頼を可視化する ― Panaceaとヒューマンネットワークとの旅

2025.10.10


1. 予期せぬ始まり

Panaceaについて初めて聞いた時、それがテクノロジーと人に対する私の考え方を大きく変えることになるとは夢にも思っていませんでした。当時、私はネパールでTechsenseと仕事をしていたところ、PanaceaのCEOである柴山さんから連絡がありました。彼の会社は、MLM管理システム「Proflow」の膨大なネットワークデータを可視化するという大きな課題に対する技術的な解決策を探していました。

同僚がMLM企業との関わりについて言及したとき、私の最初の反応は懐疑的でした。ネパールでは、MLMはしばしばねずみ講、つまり信頼を食い物にする手っ取り早い金儲けのシステムという観点から捉えられています。ネパールではMLMは禁止されていることもあり、それだけ慎重になる必要があるように思えました。そこで、私は純粋に技術的なプロジェクトとしてPanaceaに取り組みました。

私たちの課題は、10万ノードを超えるネットワークをレンダリングできるビジュアライゼーションを構築することでした。これは、Webの可能性の限界を押し広げるものでした。その段階では、ビジネスモデル、倫理、哲学などについては考えていませんでした。私の焦点は、パワフルで効率的、そして新しいものを作るという挑戦そのものにありました。

当時は、このプロジェクトが私を単なるコード作成にとどまらず、信頼、文化、そして人間同士を繋ぐ目に見えないネットワークについて深く考えさせることになるなどとは、考えてもいませんでした。

2. 技術的な課題 — ネットワークの構築

プロジェクトの最初の段階は、完全に技術的なものでした。私たちは、一般的なWeb技術では処理できない規模のデータを視覚化しようとしていました。HTML、SVG、2D Canvasといった従来のレンダリング手法では、表示したいデータのほんの一部でさえも、非常に困難でした。

これを実現するために、WebGL、Three.js、D3.jsを活用し、レンダリング処理をGPUに委ねることで、膨大な処理を処理させました。バッファを介したデータ転送を最適化し、ボトルネックを最小限に抑え、ブラウザ上でネットワークを描画する方法を見直しました。そしてついにそれが機能し、数千ものノードが画面上に現れた時、まるでコード行から有機的な何かが生まれるのを見ているようでした。

その瞬間、私の中で何かが変わりました。データとインタラクションする中で、すべてのノードが生身の人間を表し、すべてのつながりが関係性であることを実感したのです。もはや単なるデータの網ではなく、人々の生きたネットワークであり、それぞれがより大きな全体の一部なのです。この気づきは、私の中でずっと忘れられません。

3. 転機 — 日本訪問

Panaceaのチームとの最初のやり取りはオンラインでした。プロジェクトの目標に焦点を当て、効率的にコミュニケーションを取りましたが、会社の本質は依然として謎に包まれていました。しかし、日本を訪れ、Panaceaの大阪オフィスで直接仕事をする機会を得たことで、状況は一変しました。

この訪問を通して、私は日本企業、特にPanaceaがなぜこれほど特別なのかを真に理解し始めました。日本の文化は、「他人に迷惑をかけてはいけない」という暗黙の原則に根ざしています。このシンプルな価値観は、日常生活から職場文化に至るまで、あらゆる交流を形作ります。相互尊重、信頼、そして集団責任に基づく環境が築かれます。

Panaceaの中で、私はこの原則がどのように実現されているかを目の当たりにしました。チームは調和のとれた働き方をし、共通の目的意識を持っていたため、すべてのプロジェクトが意義深いものとなりました。それは階層構造や個人の功績ではなく、団結でした。

その時、私はなぜMLMシステムが日本で成功し、他の地域では苦戦するのかを理解し始めました。日本のネットワークビジネスは、信頼と信頼性の上に成り立っています。参加者は、様々な分野の専門家であることが多いのです。彼らは自分が使用する製品に信頼を寄せ、ビジネスを共有利益に基づくコミュニティと捉えています。

しかし、ネパールのように経済的な不安や不信感が蔓延している国では、同じ構造が簡単に悪用されてしまう可能性があります。信頼が崩れると、ネットワーク全体が崩壊します。違いはビジネスモデルではなく、それを支える信頼の文化にあることに気づきました。

4. システムを超えて ― 人間ネットワークの探求

Panaceaでの活動を通して、私はネットワークの本質について、そしてデジタルネットワークだけでなく、人間ネットワークの本質について、より深く考えるようになりました。

ユヴァル・ノア・ハラリは著書『ホモ・デウス』の中で、人類の最大の強みは、共通の信念 ― 宗教、通貨、国家、企業 ― を創造する能力にあると述べています。これらのシステムは、人々が集団的に信頼し合うことで初めて成立するものです。MLMも同じ原理で機能していることに気づきました。MLMは、商品やインセンティブだけでなく、信念 ― システム、コミュニティ、そして互いへの信念 ― によって支えられています。

日本では、その信念は文化によって強化されます。他の状況では、貪欲や恐怖によって弱められることがよくあります。しかし、家族、企業、デジタルプラットフォームなど、あらゆるネットワークの根底には、信頼が基盤として存在しています。

この理解は、私の技術的な仕事に新たな意味を与えました。もはやデータを視覚化するだけでなく、信頼そのものを視覚化するようになったのです。すべてのノードが人となり、すべてのつながりが絆となりました。私のコードは人間関係についての物語、つまり人間関係がどのように形成され、成長し、そして時には崩壊するかについての物語を語るものでした。

そして、それ以来ずっと、テクノロジーは信頼に取って代わるものではなく、信頼を認識し、強化し、維持するのに役立つものであるという認識が私の中に残っています。

5. 課題と洞察 — 信頼のジレンマ

MLMビジネスにとって最大の課題は、評判の問題を克服することだと私は考えています。長年にわたる悪用によって、人々は疑念を抱くようになりました。信頼を再構築する唯一の方法は、透明性と可視性です。

メンバーが自分のネットワークがどのように機能しているか、つまり、どこで成長しているか、どのように成果を上げているか、そして自分の貢献が全体にどのように影響しているかを明確に把握できれば、システムはより健全になります。ここで、可視化が重要な役割を果たします。抽象的で隠れていたものを具体的なものに変え、誰もが自分が何に参加しているかを明確に理解できるようになります。

透明性の高いネットワークは信頼できるネットワークです。人々が目にしたものを理解すると、誠実さと自信を持って関わります。

6. 展望 — 私の将来のビジョン

今後、私はネットワークビジネスにおける可視化の可能性をさらに広げていきたいと考えています。私の目標は、Panaceaの可視化ツールを1,000万以上のノードに対応できる規模に拡張し、予測インテリジェンス(成長予測、弱点の特定、ネットワークの健全性分析、そしてオペレーターとメンバーの両方が情報に基づいた意思決定を行えるツール)を導入することです。

つまり、ネットワークが自己認識型で自立的、つまり自らの健全性を監視し、時間の経過とともにインテリジェントに進化するシステムの構築を支援したいのです。

これらのシステムの透明性と洞察力が高まれば高まるほど、メンバー間の信頼関係が深まります。これこそが真の目標です。

7. まとめ — Panaceaが私に教えてくれたこと

振り返ってみると、Panaceaで過ごした時間は私にとって大きな転機でした。私は、技術的な課題を解決することに注力する開発者として、この旅を始めました。そして、テクノロジーとは効率性やパフォーマンスだけでなく、人に関わるものだと理解する者として、この旅を終えることができました。

Panaceaは、優れたシステムは堅牢なコードだけでなく、信頼、尊敬、誠実さといった確固たる価値観の上に構築されることを教えてくれました。

最終的に、私が構築に貢献したのは、単なる画面上のネットワークではありませんでした。それは、私たち全員を結びつける目に見えない信頼の網という、時代を超えたものの反映でした。

コラム一覧に戻る

-  MLM専門のシステム開発と言えば、パナシア -

panacea

丁寧な対応と、充実のノウハウで
皆さまの成功をサポート致します